人間
僕はずっと人間を好きになりたかった。
特定の誰か、ではなく「人間」という存在そのものを。
この星には人間がたくさんいる。
何十億もの人。
もし人間の事が嫌いだったらすごく大変だと思う。
生きている世界が嫌いなものだらけという事になるからだ。
生きて行くには人と絶対関わらなきゃならないし、実際僕は気が狂いそうだった。
逆に。
人間が好きだったら、パラダイスだ。
どこにだって人はいるから。
好きなものだらけ。ハッピー。
と考えたので、僕は人間を好きになりたかった。
どうしたら、人間全般を好きになれるのか?
それで、仮説を立てた。
人間のいい所に注目してそれを積み上げていけばいいんじゃないか?と。
実際にやったのは、「人をほめる事」。
これをやると人のいい所に注目できるし、上手くいけば相手に喜ばれることだってある。
それに人の笑顔を引き出せると、けっこう楽しい。
もちろん、わざとらしくなったら失敗だ。
慇懃無礼だと思われたら、駄目だし。
空気とか、程度をわきまえないと、疑われる。「こいつは何を狙ってやがるんだ?」と。
なので、ちょこっとずつやっている。
その人の大切にしているものの話を聞いたりとか、さりげなく「それいいね」って言ってみたり。
スパーリングパートナーがいる。
母だ。
母はめったに人をほめない。というか、貶してばかりだ。
テレビを見ていても、芸能人や女優を「ブサイク」と言ったり、
ちょっと積極的なお笑い芸人を見たら「やかましい、テレビに映るな」とか言う。
それに対して僕は、「でも、表情がいいよね」とか「元気な人っていいじゃん」とか必死の抵抗をする。
まだまだ、勝てない。
もっとうまく、自然に人をほめられるようになりたい。
いや、そもそも勝つ必要がないか。
物の見方は人それぞれだから。
ただ、
肯定する側と、否定する側を選ぶ機会があるのなら、間違いなく僕は肯定するほうを選びたいと思っている。
それでは、また。