自由
検査を終えて、次の日から仕事に復帰させてもらっている。
久しぶりに会った配達先の人たちは、相変わらずやさしい。
あいさつをすれば、笑顔で応えてくれる。
「ポカポカしてますね」と声をかけると、「暖かいね」とうなづいてくれる。
そういうことが、うれしい。
体調は少しずつ良くなってきた。
食事の量を倍にして、
造血剤を欠かさず飲み、
睡眠時間を5時間から7時間にしたのが効いているみたいだ。
それでも、仕事を終えるとぐったりする事になる。
布団の中で1時間くらい、じっとしている。
外に出る度に、そういうチャージの時間が必要になっている。
体はすこし、不自由。
だけど。
大きな自由を手に入れた。
僕は統合失調症を患った時から、10年以上電車に乗っていなかった。
脱出不可能な状態で知らない人と過ごす事が怖かった。
こわい人なんてそんなにいないはずなのに。
ところがこの間。
大腸カメラの検査で病院へ向かう時、ためしに電車に乗ってみた。
すると。
……平気だった。
何にもこわくなかった。
こりゃあ、いける!と思ったので、
先日、僕は電車に乗って遠出してみた。
3駅分。
人通りの多い、若干都会っぽい街へ。
予想通り、電車に乗っただけでだいぶ気力を消耗した。
僕は安心感が欲しくなったので、
人に声をかけてみた。
工事現場で交通整理をしている人に声をかける。
こんにちは、おつかれさまです、と。
すると、にっこり笑ってくれたので肩の力が少し抜けた。
電車から降りて3時間くらいぶらぶらしてきた。
色んな刺激を味わうぜ!と思ったのだが、
気づくと僕はいつもの行動パターン通り、書店や図書館、公園などをまわっていた。
公園で写真を撮ってきた。
梅。
シバヤギたち。ポニーもいた。
どの道を行っても新しい景色。
知っている人が誰もいない。
なにかあっても、自分一人で対処するしかない。
心地良い緊張感と、圧倒的な解放感。
自分の住む街を出る事が今までほとんどなかったので、楽しくてしょうがなかった。
帰宅してから3時間以上、布団でぐったりする事になったけど、
心は自由に羽ばたいていた。
日本だったら、どこへでもいける。
今まで会えなかった人に出会える。
知らない場所で、いろんな思い出を作れる。
そう思うと、今でもすごくワクワクしている。
自由を感じる。
それでは、また。