宣言
午後1時。
こたつに入ってクロとポテトチップ(のりしお味)を食べていたら。師匠がやってきた。
ミニスカートだった。
目のやり場に困る。
午前中、恋愛小説を読んで胸を熱くしていた事を師匠に伝えた。
「独身男の悲しい日常だな」
――余計なお世話です(笑)。
僕は師匠と普通に話せて、普通に笑える事が嬉しかった。
心臓はずっとドキドキしていたけれど。
何気ない話を小一時間して、好みの異性のタイプの話になった。
師匠の好みは、
・人を差別しない人。
・器がでかくてお金のある人。
・自殺しない人。
という事らしい。
僕は頑張ろう、と思ったけど何をどう頑張ればいいのかわからなかった。
「それとだな、男は腕っぷしだ。いざというとき弱いものを守れん奴なんて論外だ。絶対に惚れてやらん」
……筋トレしなきゃ。
お前はどうなんだ?と言われて答えに困った。
どうするべきか?
100点満点の人が目の前にいるのだから、説明したらばれるかも。
いや、1回説明したけど、全然気付かなかったな。
――前言ったとおりです。好きになった人がタイプです。
「……そうか」
師匠はつまんない、という顔をした。
僕は言った。
――告白しようと思うんです。
師匠の大きくてまん丸の瞳がさらに開いた。
――もうずいぶん、練習を積んだんです。コンビニで「レシートください」って言ったり、世間話を切りだしたり。自分の思ってること、けっこう言えるようになったんです。そろそろ、言えそうな気がして。
「頑張ったんだな。だが、勝算はあるのか?敗者の美学なんて私は認めないぞ」
師匠は急にとりみだした。いつも冷静なこの人があわてる理由が僕にはわからなかった。
「ふられても、バカなことを考えるなよ。ひらたくいうと、自殺なんかするなよ」
一瞬、冗談かとも思ったが、その眼差しと口調で本当に心配してくれている事がわかった。
――ふられて全部投げるようなケチな恋はしてません。
僕がそう言うと、目の前の大きな瞳がゆっくりとうなづいてくれた。
告白は来週ぐらいにしようと思っている事を伝える。
「うまくいくといいな。頑張れ」
師匠が僕の気持ちに気付く気配は全くなかった。
ちなみにアイハラ君の好みは、エロい、いや、色っぽい女性だという。
だからミニスカートなんですね、とたずねると、
「エロい目で見るな、変態!」と怒られた。
アイハラ君はいいのに何で僕は……。
そうか、これが俗に言う「ただしイケメンに限る」だな、と納得した。
ちょっとへこんだ。
それでは、また。