hatopoppo_25's blog

気づけば普通の日記になっていました。

【送料無料】僕のひきこもりナンパ宣言...

【送料無料】僕のひきこもりナンパ宣言...
価格:1,365円(税込、送料込)

告白

……告白するぞ。

僕は朝から緊張していた。

朝のニュースの占いを気にしていたが、恋愛とは全然関係ない内容だった。

クロを抱き上げて、僕頑張るよ、と言ってみる。

ブッ!

あいつは屁で応えた。なんて奴だ。

 

午前中、ずっと師匠の事を考えていた。

出会った当初、見下されていた事。

やけくそで弟子入りした事。

ぶつかれば本気で応えてくれた事。

 

あえて特別なことはしない。

服装も外に出て恥ずかしくない程度のものにとどめておいた。

ふられるのが怖い。

でも、自分の気持ちにふたをして、何年の後になって「もしあの時、告白していたら……」なんて思うのはもうやめるんだ。

僕の人生そんなのばかりだった。

変えたかった。ずっと変わりたかった。

そして、今日変わる。

 

午後1時。師匠が現れた。

こんな日に限って師匠はぶっちぎりに可愛かった。

――師匠、今日はいつも以上に可愛いですね。

「お前、わかってるな。でもキモいわ」

――ひどい。

師匠と僕は声をたてて笑った。

 

そのあと師匠はクロのレポートを書いていた。その間、ずっと2人でしゃべってた。

最近寒いから靴下を2枚はいて寝ます、とか、私は湯たんぽ派だ、とか。

皿洗いがしんどい季節だな、とか、肉まんおいしいですよね、とか。

ほんとにどうでもいいことで、時間がゆっくり流れていく。いつの間にか僕たちは普通に話せるようになっていた。だけど、今日は緊張していた。

胸が熱かった。くるしい。

いつの間に師匠にこんな気持ちを抱くようになったのだろう。わからない。

でも、間違いじゃない。

僕は話しながら、ずっと師匠を見つめてしまっていた。

視線に気づかれた。不思議そうに僕を見る。

 

師匠は「気を使うメリットがない」と僕にぶっきらぼうにふるまう。でも僕はそこに救われている。

「自分はうまくやっている」なんて言うくせに不器用でいつも傷ついている。

「私は弱音なんて吐かない」と言いつつ、思ってる事がすぐ顔に出る。

きっと辛い事、しんどい事、悩み、色々あるんだろう。

僕が誰かの力になりたいなんて思ったのは何年振りだろうか。

実際には僕が頼りっぱなしだけど。

 

思い切って言った。

――師匠。教えて欲しい事があります。

「何だ?」

――目の前に好きな人がいるんですけど、気付いてくれないんです。

「?」

わかってない。

――具体的に言うと、あなたに対する僕のこの気持ちをどう伝えればいいんですか?

師匠の瞳がゆっくり、大きく開いた。

驚いた顔を見て、僕は一気にたたみかけた。

「大好きです」

 

 

 

 

 

 

 

 

ふられた。

 

 

 

「気持ちはありがたいが、無理だ、付き合えん」とはっきり。

ですよね、と、わかっていたのに若干傷ついた僕がうつむく。

すると師匠は、

「女なんていくらでもいる!」

「お前が悪いんじゃないからな!そうだ、私にはアイハラ君がいるからな!」

「必要以上に落ち込むなよ!」

「つ、次があるさ!あ、次って別の女の事だからな!」

とか早口でまくしたてて、なぐさめて(?)くれた。

僕は焦っている師匠を見るのも面白い、なんて意地悪に強がってた。

 

「……全然気付かなかった。すまない」

――その……、気持ち悪いとか、思ってませんか?

師匠は目を伏せて首を左右に振る。

「嬉しくない、と言えば嘘になるレベルだよ」

僕はそれだけで、もう……。

「だけどな」

何か怒ってる?

「お前言ったよな。好きな相手は『裏表があって』『強くて』『ちょっと駄目なところがある』と。どういう事だ?」

――……そ、それは……。

僕は全力でごまかした。

怒った口調で僕を責めながらも、師匠の目は笑っていた。

ふられたけど、いつも通りの「何か」がまだここにある。それが何よりもうれしかった。

 

ああ、ふられた。

けど、涙は出ない。

僕は今、笑っている。

それでは、また。