大人の男に憧れる
引っ越しをするので、引っ越し業者の人に見積もりを頼んだ。
電話をかけて1時間くらいして、担当の人がやってきた。
大人の男の人がやってきた。1人。
人懐っこそうな笑顔が印象的な、好青年。
スーツ姿。黒い革みたいなスーツケースを携えていた。
部屋に通すと、さっそく名刺を渡された。
おお、働く大人だ、と思った。
僕は働く大人の男が好きだ。(変な意味じゃなく)
僕は幼いころに父と離れたので、大人の男の人を見ると父親を投影してしまう事が多々ある。
加えて、自分自身、働いた事がほとんどないので、大人の男の人と接する機会があんまりなかった。
故に憧れる。
かまってくれ!何か教えてくれ!と思ってしまう。
なので、色々教えてもらった。
笑顔の青年が言うには、
引っ越しというものは時期によってその価格がものすごい影響を受けるらしい。
例えば、人気のない正月や、台風のシーズンで6万円くらいの引っ越しがあったとして、
全く同じ内容でも、1番忙しい3月の末頃では、25万円くらいになるという。
僕はその話にビックリした。
同時に書類を書きこみながら、クイズ形式でその話をする青年の手慣れた感じにも感心していた。
きっと彼はたくさんの場数を踏んできたのだろう。
失敗もいっぱいしてきたのだろう。
だが、彼はそれを乗り越えてきた(たぶん)。
そして、今がある。
僕はそれがかっこいいと思った。
他にも青年が引っ越しの現場で働いていた時、階段から滑り落ちてもダンボールに入った荷物を守った話も聞いたし、
見積もりに引っ越し業者を何社も同時に呼び出して、オークションみたいな事をさせるお客さんもいる話も聞いた。
何と言うか、面白かった。
気づくと僕は見積もりそっちのけで、青年の話に聞き入っていた。
ありがとう、お兄さん!と子供視点で思ったり、
頑張れよ青年!とおっさん視点(僕は31歳)で思ったりした。
どの立場で自分は思考してんのか、自分でもわからなくなる時がある。
大人ってもっと立派なものだと思っていたけど、
僕は変な大人になってしまったのかもしれない。
それでは、また。