hatopoppo_25's blog

気づけば普通の日記になっていました。

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引っ越しの人たち

引っ越し業者の人たちの事を思い返してみる。

夕方3時に3人で3トントラックで来てくれた。

 

窓の外にトラックが入ってくるのが見えて、しばらくすると玄関のチャイムが鳴った。

ドアを開けると、40代くらいのおじさんが立っていた。

青いユニフォーム姿だ。

やせ形で、無駄な贅肉が付いていない。

精悍な顔つきと、落ち着いた佇まいを見て僕はサムライみたいだと思った。

上がってよろしいですかと聞かれて、上がってもらった。

作業の前の説明に入る。

 

サムライが正座をして説明を始める。

僕も向かい合って正座をして話しを聞いた。

僕が運んでほしいものと運んでほしくないものの説明をし、サムライは注意事項の書かれた紙を僕に見せながら、丁寧に確認をとる。

最後に説明の紙にサインをし、料金を支払ってお話は終わった。

 

サムライが姿を消して5分くらいした後、大量の毛布みたいな布や、家具のカバーを持ってきた。

おお、始まるんだな、と思っていたら、

「こんにちわー」と体格のいい男の人が現れた。

オレンジっぽい茶髪。眉毛もいじっているらしく、ところどころ禿げている。

どう見てもヤンキーぽかった。

僕は若干ビビりながら、お願いします、と頭を下げた。

 

ヤンキーは早速ダンボールに手をかけた。

軽く揺らすと、カチャカチャ音がした。

ヤンキーは、

「これ、皿がむき出しで入ってるみたいなんですけど、このまま運びます?割れるかもしれないんですけど」と聞いてきた。

僕は、今さら開いて梱包をやり直すわけにもいかないし、自分で運ぶのも面倒だったので、

「そのままやっちゃってください。割れてもしょうがない」と答えた。

するとヤンキーは眉を軽く持ち上げて、お?やんのか?という顔をして、「わかった。」と答えた。いきなりタメ口になったのを聞いて、僕は嫌みのない親しみやすい男だと思った。

 

続いてもう1人。

メガネをかけた若干太った青年が部屋に入ってきた。

目を合わせようとしない。

僕は一応「今日はよろしくお願いします」と挨拶をした。

すると、彼は「どうも、よろしくお願いします……」と小声で言った。

コミュニケーションが苦手な人なのかもしれない。

自分もそういうところがあるので、僕は彼に親近感を覚えた。

 

作業は怒涛の勢いで進んだ。

とにかく早い。

無駄がない。

独特のテンポで作業は進んでいく。

さすがプロだと思った。

家具を持ち上げる3人の腕を見ると、筋肉が収縮し、血管が浮いていた。

力強く頼もしい腕だと思った。

 

サムライは気さくな人で、豆腐屋の車が通ると「ああいうとこの豆腐って美味しんですよね」とか声をかけてくれたり、その後も何度か笑顔で話しかけてくれた。

緊張していた僕の事を気づかってくれていたのか、僕には彼のその気持ちが嬉しかった。

他にもネジの足りなかった僕の本棚の修理をしてくれたり、一生懸命家具の掃除もしてくれた。

大好きだと思った。

 

僕は2階に住んでいたのだけど、自転車の音が外から聞こえてきた。

1階では学習塾がやっている。

その日は塾の日だった。

子供たちが集まってきているようだ。

下の方から声がした。

「このお兄ちゃん、こわーい!」

女の子の声。

ヤンキーを怖がっているらしい(笑)

それに対してヤンキーは、「怖くないよ☆」とおどけた声で応えていた。

やっぱり彼はいい奴だと思った。

サウンドオンリーだったので、少女の反応はわからない。

わからないけど、僕は一人で噴き出していた。

 

作業も終盤に入り、サムライがメガネ君に指示を出す。

エアコンの室外機やって、と。

メガネ君は汗だくだった。

シャツの下半分まで汗でぬれていた。

疲労の色が顔に浮かび、それでも頑張る姿に心を打たれた。

僕は普段写真を撮らないけど、その時の彼を撮ったらいい1枚になるんじゃないかと思った。

 

1時間程して、荷物を運び出す作業は終了した。

新しい部屋に荷物を入れる時も、丁寧かつ迅速な作業をしてもらい、無事に引っ越しは完了した。

僕はずっと見ているだけで、彼らに申し訳ないのだけれど、すごく楽しかった。

引っ越し作業なんて普段見られるものじゃないし、

一生懸命人が働く姿を見るのも興味深かった。

僕はあの日の事を忘れないと思う。

3人に感謝している。

それでは、また。