これはまずい
「ドラゴンとの楽しい里親生活 ガイドブック」。
全60ページ。ちょっと読んだ。
「これであなたは、ドラゴンの里親です。このガイドブックをよく読んで楽しいドラゴン生活をスタートさせてください。」ページをめくる。
「基本ルール」
1、ドラゴンを育てる期間、一年間。
2、一年無事に過ぎれば成功。死なせると失敗。
3、成功報酬:日本円10万円。
損害賠償:日本円1億円。
……まて、成功したら10万で失敗したら、1億?
やっときた!
これで金を取る気か!
僕は馬鹿らしくなって、冊子を閉じた。
こんなの無視しとこう。
しかし、あの女の子はなんだったんだ?
もう一度開く。
目次で調査員の項をみる。ページを開く。
「調査員」の説明。
1、里親の補佐および、監視、ドラゴンの生態記録を行う者。
2、基本的に1週間に一度、ドラゴンの記録を取るために里親のもとに訪れる。
3、里親および調査員間のトラブルに関して当社はいかなる責任も負わないものとする。
穴埋め式の記入欄があった。手書きで「調査員」のプロフィールが記されていた。
→名前「シシドアイコ(仮)」
(仮)ってなんだ?カタカナ。正体は隠すということか?
→自己紹介「このバイトは初めてだけど、がんばります。将来は動物にかかわる仕事をしたいと思っています。至らないところもあると思いますが、一生懸命責任を果たしたいと思うので、よろしくお願いします。」
バイト?なんだそれ?どんな設定だよ?
彼女もあちら側の人間なのか?
でも、カッターナイフを構えて、おびえた目で僕を見ていた目は本気だった。彼女もはめられているのか?
大体何であんなにおびえていたんだ?
そんなに僕は気持ち悪いのか?不審なのか?嫌なのか?
ああ、もういいや。
とにかくこれは手の込んだいたずらか、新手の詐欺だろう。
ダンボールに入ったままの卵を手に取る。
黒地に蛍光ピンクのまだら模様。
祭りの時のカラーひよこを思い出した。
ノータッチで行こう。うん、それがいい。
いや、また来るのか?カッター女子が。
もう一度最初の「基本ルール」をみる。
4、ただし、卵が孵らなかった場合、契約自体を無効とする。
5、ドラゴンについては、一切の情報漏えいを禁ずる。
……卵、孵るな。
それでは、また。