hatopoppo_25's blog

気づけば普通の日記になっていました。

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説教と、目を合わせる事と、かわいいこと

師匠に説教された、正座で。

クロを育てていく自信がありません。と言ったら、

「なんだと!ちょっと座れ!そこに座れ!」

……で、30分。

「親に見捨てられる子どもの気持ちが、お前には分からないのか!?」

「親が馬鹿だと子どもが苦労する。その子には責任がないのに、だ!」

怒っていた。今までで一番怖かった。真剣だった、鬼気迫るものがあった。

師匠は最後には涙目になって、

「だから、見捨てるなんてひどいことはするなよ。そんな悲しいことするな」

と結んだ。

すみませんでした。と、謝ると、

「……私にじゃないだろう。この子に謝れ」

僕はごめん、とクロに謝った。クロはニャー、と言って僕の手をぺろりとなめた。

よし、と師匠は安堵の顔を浮かべ、うなづく。

師匠はバッグからレポート用紙のようなものを取り出して、クロを見ながら何かを書きだした。

デジカメは使わない。

孵化したから、調査員としての業務内容が変わったのだろうか?

「それにしても、全然かわいくないな。なんだこの生き物は?」

……ひどいよ。

僕はクロのことをかわいいと思っていたので、ショックを受けた。

確かに、顔はゆがんでいるし、二頭身だし、手足もびっくりするぐらい短い。

不細工だと思う。

でも、かわいい。

いわゆる「ブサカワ」というものだと思う。飼っているうちに情が移ったという側面も強いだろう。でも、だからこそ、それでも、かわいい。

「それから、だ」

サラサラっと、レポートを書き終えた師匠は再び口を開いた。

「お前、人と話すときはちゃんと相手の目を見て話せ。会話の基本だぞ」

僕は恐る恐る師匠の顔を見た。

初めて顔をじっくり見た。

衝撃を受けた。

真ん丸な瞳も、すっと通った鼻筋も、チークでほんのり淡いピンクの頬も、グロスが乗って光るくちびるも、すべて「女の子」らしかった。

いつも怒られてばかりだし、偉そうだし、将軍様みたいだから気付かなかったけど、こんなに可愛かったのか。僕が驚いていると、

「じろじろ見るな、キモい」

いや、師匠が見ろって……。

「限度と言う物がある。これだからキモオタは……」

……いま、キモオタって言った。あんまりだ。僕は傷ついた。

師匠が仏頂面で横を向いたとき、携帯が鳴った。

「もしもし、うん、わたし~。えっ?すぐ行く。うん、そう…」

髪を指でくるくる弄ぶ。瞳がきらきらしてる。危険なほどかわいらしい。

「私も、サトウ君に会いたかったんだ~。うん、じゃあ後でね~」

サ・ト・ウ!

僕は「サトウ君」に激しいジェラシーを感じていた。

その後、僕をそっちのけで師匠は出て行った。

僕は床に這いつくばる。

調子を崩した。

30分も人と話すことも負荷であるし、

人の目をまっすぐ見つめるなんてことももう何年もなかった、

おまけにちょっといじめられた。

ヒルナミンに手を伸ばすと、クロが「ニャー」とすり寄ってくる。

クロ、これはご飯じゃないんだよ。

僕は足をガクガク震わせながら微笑んだ。