穏やかに、死にたい気分について考えた
クロ、と呼ぶと、
「ニャー」と鳴きながら寄ってくる。
……かわいい奴め。
テーブルの上にペットボトルのお茶。
午前中、自動販売機に行ってきた。人がいなければ外出も脅威ではない。
友好的な家族(珍獣)と、(条件さえそろえば)出かけられる場所がある、というゆとりを得た僕は、ここ何年もないぐらい穏やかな気分だった。
ふと、最悪だった時のことを思い起こした。
精神病院に措置入院していた時のことだ。
自殺願望がかなり強かった。
十年の付き合いのある主治医に何度かこう言われた。
「君は死んじゃうんじゃないかと思っていた」と。
引きこもることで生き残り、死にたいとは思わなくなった。
何で僕は死のうとしていたのか?
自分の見聞きするものをすべて人に否定された。
「それは幻聴だ。妄想だ。信じるな」
じゃあ、何を信じろと言うのか?
自分の五感を信じられなくなって、行き場を無くし僕は閉じこもった。
自分が嫌いで、ゆるせなかった。
誰にもあいされない。
自分には価値がない。
話を聞いてくれる人がいない。
理解者はどこにもいない。
居場所もない。
無力感と焦りだけが全身をつつみこんでいる。
そんなふうに感じていた。
だから、いたずらに死を望んだ。
今はちょっと違うけれど。
正直、この先どうしていいかもわからない。未来に何の保証もない。学歴もない。資格や特技、人に誇れるものもない。そもそも外に出られない。
「ないない尽くし」だ。
だけど、生きて、応えをさがしたい。
クロが僕の膝の上に乗ってくる。
頭をなでてやると喉をゴロゴロ鳴らす。
やっぱり猫だろう、お前?
僕は今、笑えてる。
それでは、また。