新聞紙と妄想
猫じゃらしを使ってクロと遊ぶ。
散歩のとき千切ってきた。
ヒガンバナの赤、しおれた白い花、花のないたんぽぽ。
吹き荒れる風に舞う枯れ葉なんかも楽しんできた。もうすっかり秋だ。
猫じゃらしを、びゅんびゅん振るう。
右に振るえば右に、左に振るえば左に飛びかかるクロ。
たまに短い脚が、絡まってこける。
HAHAHAHAHA!
外国人のように笑う僕。
しあわせだ。
飽きもせず何十分か遊び続けた。
勢い余ったクロが壁をひっかく。
少しとがり始めた爪にあたって、壁に貼ってある新聞紙がはがれた。
血の気が引いた、焦った、こわい、やめて。
我が家の壁には隙間なく新聞紙が貼られている。
もちろん自分でも異常だとはわかっていた。
しかし、どんなに人に好奇の目で見られても、疑いの目で見られても、あからさまに蔑まれても僕はこれをはがすことができなかった。
見られている。
壁に穴があいている、あるいは隠しカメラが付いている。そんな気がする。
責められている気がする。
家の中にいるのにノーガード。
笑われる、嫌われる、けなされる。そんな気がしてしょうがない。
もちろん、常識的に考えればそんなことはないのだろう。
自分だっておかしいとはわかっている。
しかし、感覚と感情が、思考に反発する。
どうしようもなかった。
いつか僕に、自分の手で新聞紙をはがせる日が来るのだろうか?
とりあえず今日のところは、新しい新聞紙を画鋲とガムテープでぴったり貼っておいた。
それでは、また。