ここからだ。
全て折り終えた。
ユニット折り紙、柄なし、色合わせなし、90枚。
後は組み立てるだけ。
写真で完成品を見た事はあったが、どう組み立てればきちんと90枚で球ができるのか、僕は知らなかった。
ここからが本当の挑戦だ。
完全な球になるから、おそらく全てのパーツは同じパターンで組まれるはずだ。それを突き止めることが先決になる。
僕は子供のころ買った「最新折り紙のすべて」という本を開き、じっくり写真を見た。とにかくでかいという事と、これは長期戦になるという予感だけは感じ取った。
僕はいままで、思いつきだけで生きてきた気がする。
「あれをやりたい、これがやりたい」といい、適当に始めて、都合が悪くなると逃げるというパターンを繰り返してきた。
人に迷惑をかけながら。
やっている事は、ただ折り紙を折っているだけだが、僕はこれからの人生をこれに賭けている。ここで逃げたら逆戻りだ。
みっともなく逃げ回って隠れるだけの情けない自分をこえてやる。
机の上にパーツを並べると、クロがその上に乗っかろうとする。
乗るな、と注意しても全然言う事聞いてくれない。
なんてやつだ。
……そうだ、独りじゃなかった。
あのころとは違う。負ける要素がない、自分から逃げない限り。
それでは、また。