コンビニ
明け方、僕はコンビニエンスストアの前に立っていた。
師匠との約束、課題をこなすためだ。
念のために予防のヒルナミンを飲んでおいた。
なかなか入店できなかった。
やっぱり怖い。
人が少ない時間を狙ったけど、コンビニという要塞そのものが怖い。
しかし、もたもたしていて夜が明ければ、人が集まってくるだろう。
僕は意を決して店の中に入った。
「いらっしゃいませ~」
おじさん店員が一人いた。思い込みかもしれないけれど、視線が鋭い気がした。
おにぎりのコーナーへの直進ルートと、本棚への店員回避ルートの2択。
迷わず本のコーナーへ潜り込む。
客は僕以外1人もいなかった。
目的は「他の人の役に立つ事」すなわち「レジの横にある募金箱にお金を入れてくる事」だった。
たぶん、本当はコンビニに挑戦しろ、という事なのだと思う。
募金だけして帰って行くのも怪しまれそうなので、何かを買ってそのおつりを入れる、というのが僕の考えた筋書きだった。……筋書きでも何でもないか。
何を買おう?
本のコーナーからつきあたりを見ると、冷凍の棚が設置してあった。
興味の赴くままのぞいてみる。
アイスクリームだけかと思いきや、ガッツリ系の冷凍おかずが売っていた。
しかも、100円!
から揚げ、やきそば、五目ごはん、ギョーザ、ええと、あとなんだっけ?
色々あった。テンパってて全部は覚えてない。
とにかく驚いた。充実のラインナップだ。すごいよコンビニ!
とりあえず、クロも食べられると思ってから揚げ、自分用にギョーザを手に取る。
……師匠へのお土産も忘れない。
そのままレジへ。
店員さんの視線が怖かったので、ずっと下を向いていた。
わざとおつりが出るようにお金を支払い、10円玉を緑の募金の箱に入れてきた。
コンビニから脱出した僕は、冷凍食品でひんやりしたレジ袋を片手に、小さくガッツポーズをつくった。
それでは、また。