お世話になった人
今日は2週間に1回の通院日だった。
僕は笑顔に挑戦した。
診察券を渡す時、受付の人に笑って見せたのだ。
無反応。
たぶん失敗だろう。気持ち悪いと思われているかも。
そもそも何が成功なのかも、わからない。
でも、わるくない。失敗するのもけっこう楽しい。
そのうち普通に笑えるようになる気がする。根拠はないけれど。
待ち時間中、入院病棟の看護師さんとすれ違った。
僕の知っている人だ。
向こうはこちらに気づいていない様子だった。
もう10年以上前に世話になった人だ。
一時期病気がひどくて措置入院していた時、あの看護師のおばさんは僕をグラウンドに連れ出した。
で、説教。
「病気でここに入院している人は余裕がないし、人に感謝する気持ちがない。あなたはどう?」
「世の中には不幸な人がたくさんいる。治療を受けられて、薬を飲めるだけでも幸せだと思わない?」
「弱気になっちゃ駄目」
なんだ?僕は責められてるのか?この人なんか怖いな、ぐらいにしか思わなかったけど、嫌な感じはしなかった。
一生懸命何かを伝えようとしてその上、こちらの事を考えてくれているのがわかったからだ。
でも、当時の状態で人に感謝したりする余裕はなかったです。ハードル高いです。無理でした。
いま、わかったけど。
今日もあの人は患者に説教しているのだろうか?
遠くなっていく背中に、あの時はありがとうございましたとつぶやいた。
それでは、また。