電話と緊張
朝から緊張。
僕はバイトの申し込みの電話をかけようとしていた。
掃除のバイト。
1日2時間。
近所のスーパー。
週休2日。
掃除は好きだし、短時間と言うのは発作を恐れる僕にとっては嬉しい。
近所というのも安心材料だ。
でも、正直こわい。
10代のころは色々バイトしていた。
しかし、統合失調症になって20代はずっと引きこもっていた。
今の自分にやれるのか?
不安が頭の中をぐるぐる回る。
しかし、
勇気を出して電話した。
中年の女性が出た。
はきはきと喋る人だった。
――新聞のチラシを見て電話をかけました。
「どこの店舗を希望ですか?」
――○○店です。
「今担当の者がいないので、夕方にこちらからお電話さし上げます。よろしいですか?」
僕は、よろしくおねがいします、と電話越しに頭を下げた。
ちゃんと話せてたかな?とか、
もう評価は始まっているのか?などと考えた。
それからずっと緊張していた。
劣等感と不安が脳を休ませてくれない。
胃がキュッとする。
自分のメンタルの弱さと、社会経験の不足を思い知った気がした。
お昼頃、コンビニへ行った。
店員さんを見てしまう。
この人たちも頑張って働いているんだな、と改めて思った。
支払いをして、おつりをもらう。
カウンター注文のから揚げ棒を受け取りながら、
ありがとうございます、お仕事頑張ってください。と伝える。
店員のおばさんは驚いた顔をしていた。
変な奴と思われたかもしれない。
やっちまった。
恥ずかしくなった僕は若干の急ぎ足で店を出た。
さっき電話があった。
若い男性の声。おそらく年下。
年齢は?と聞かれ、
31です、と伝えると、「若いですね」と言う言葉が返ってきた。
どうやら平均年齢が高い職場のようだ。
声の後ろの方でがやがやといろんな音が聞こえた。
立て込んでいたのかもしれない。
また面接の日が決まったら連絡するので、写真付きの履歴書を用意しておいてください、とのこと。
面接は現場のスーパーでやるらしい。
履歴書は明日用意しようと思う。
どうなるかわからないが、挑戦してみる。
それでは、また。