桜
朝、散歩をした。
丁度いい曇り具合だったので、僕は少し遠出をすることに。
家から2番目に近い公園。
そこの桜の木が切られていた。
鋭利なもので切られたのか、スパッと切断されている。
他の木を見ても枝がところどころ切られていた。
たぶんイタズラとかじゃなくて、誰かが仕事で切ったのだと思う。
毎年木の剪定をしている人を見るから。
ただ、公園裏に生えていたその木は根元からバラバラにされていた。
僕は何とも言えない喪失感に襲われた。
あの桜の木は僕がこの町に引っ越してきた時からあった。
18年以上前だ。
自転車で中学校や高校に向かう時に必ず目にしていた。
夏は日よけになったし、冬はその姿で季節の無常を示してくれていた。
もちろん春の花はとてもきれいだった。
僕は特別に木が好きという訳ではない。
それでも日常にあったものがいきなり姿を消す事は、さみしい。
幼いころ、僕は工作が好きで、
恐竜のペーパークラフトやロボットのプラモデルをよく組み立てていた。
恐竜が好きだったし、ロボットだってお気に入りだった。
ところが、作ったものが一定量たまってくると、母に捨てられる。
母からすると、僕の作るものはゴミにしか見えなかったのだろう。
でも、愛着のあるものを失うたびに僕は傷ついていた。
バラバラになった桜の木も、僕にとっては愛着のあるものだった。
輪切りになってバラバラに転がるその姿は、残酷だと思った。
僕には何もできる事が無い。
桜の木は帰ってこない。
だけどたまにはあの桜の木の事を思い出したいと思う。
それがささやかな抵抗だ。
ちょっと寂しいけれど。
それでは、また。