hatopoppo_25's blog

気づけば普通の日記になっていました。

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白髪染め

午前中、母から電話で呼び出し。

「手伝ってほしい事があるの。来て」

――どんなこと?

ガチャ。

切りやがった。

それで、実家へ行った。

 

白髪染めを手伝ってほしいという事だった。

――え~?めんどくさ~い!

と、オネエな感じで僕が抵抗すると、

「黙って手伝え」とキレられた。

短気母さんである。

冗談が全く通じない。

しかし、僕はさらに食い下がった。

交渉に持ち込んだのだ。

今週のハンバーグを作ってくれ、と。

僕は最近ハンバーグを作るのが面倒になって来ていた。

冷たいひき肉をこねた後で、お湯で食器を洗っていると、しもやけになる。

それが嫌だった。

 

スムーズに取引は成立した。

染める。

母の後ろの立って後頭部に薬剤を塗っていく。

正座する母の背中を見て「小さくなったなあ」と思った。

 

全部塗り終えてから少し話す。

「こうやって白髪を染めた事も、お母さんが死んだらいい思い出になるのよ」とか言い出す。

いちいち会話に死の匂いを漂わすのは、母がうつ病だからなのか、ただ人生が終わりに近付いているせいなのか、僕にはわからなかった。

僕は、縁起でもない事を言うな、生きる事を考えてくれ、とお願いしておいた。

 

続いての攻撃。

「お母さんの事好き?」

と聞いてきた。

僕はちょっと考えて、正直に思っている事を言った。

ある意味ではそうだし、ある部分では憎んでもいる、と。

すると母は「なにそれ、ひどい」とご立腹になった。

大好き、と言って欲しかったらしい。

彼女か、お前は?

ちょっとまずいと思ったので、僕は補足した。

 

人と人が真剣に向き合えば傷つけあう部分は出てくる。

人にはそれぞれ違いがあるから、それはしょうがないんだ。でも僕はそれでいいと思う。

と、説明した。

すると母は「そんな難しい事わかんない」とプンプンしながら風呂場に入って行った。

ああ、怒らせちまった。

死ぬとか言い出したらどうしようって、本気で悩む。

ところが。

母は上機嫌で風呂から戻ってきた。

白髪がきれいに染まればそれでよかったらしい。

振り回されている。

それでは、また。