hatopoppo_25's blog

気づけば普通の日記になっていました。

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おねだり

皿洗いを終えて掃除機をかけていたら、母から電話がかかってきた。

「今スーパーにいる」と。

用件は?と聞く。

「スキニーのズボンが欲しい。お金出してくれない?」

僕は、やだ。と答えた。

すると、

母は「じゃあ、いい」と言って通話を切った。

 

そのあと、なぜこのタイミングでかかってきたか考えた。

すぐにわかった。

明日は母の日だ。

僕は毎年、母に何かをプレゼントしている。

母はたぶん、その事を前提におねだりしてきたんだと思う。

ちなみに今回はすっかり忘れていた。

言ってくれればいいのにと思いつつ、もう1度電話がかかってきたら応じようと思った。

 

電話がかかってきた。

しかも丁度僕の思考が固まったあたりで。

思考を読まれているのかもしれない。

「2500円の20%引きっていくら?」

――2000円だけど。

「安いと思わない?」

テレビの通信販売みたいな攻め方だと思った。それで、

「半分出して」と要求してきた。

 

母は若い頃、魔性の女だったと自分で言っていた事がある。

よく男の人にご飯をおごってもらったり、色んなところへ連れて行ってもらったり、プレゼントをもらったりしていたという。

景気のいい時代だったらしい。

そのころの名残なのか、母は何かをプレゼントされる事が大好きだ。

僕はできる範囲でそれに応えている。

でも、母の日をはじめ敬老の日、誕生日、クリスマス、と多段攻撃を仕掛けてくるのは勘弁して欲しい。

 

結局僕は、わかった、と電話越しに応えた。

母はうれしそうな声で「ありがとう!」と言って通話を切った。

彼女が嬉々として買い物をする姿を思い浮かべて、僕は小さく笑った。

それでは、また。