声を出す
僕は天気がいい日は近所の河原へ行く。
声を出すために行くのだ。
歌いたい歌がたくさんある。
でも、僕は高い声が出せない。
ドレミファソラシド、の1列でもおぼつかないぐらいだ。
頑張って歌っても、声が裏返ってしまう。
なので、サビに入ると1オクターブ下げるというしょっぱい対処しかできない。
ちくしょう、思うままに歌ってみたい……!
という訳で、発声練習をしている。
アパート暮らしなので、部屋では大きな声を出せない。
なので、近所の人気のない河原へ。
その時には音の高さを計るチューナーをダウンロードした3DSを持っていく。
そして、ひたすら「アー」って声を出す。
高い声を出すには、低い声を出せるようにならないといけないらしいので、低音も出す。
そっちもそんなに低い音が出せない。
だけど地道にやっている。
始めてから何カ月も経ってないからか、未だ音域は広がっていない。
しかし、チューナーの針を真ん中に保つことはできるようになってきた。
そういう事が面白くなってきた。
練習したとして、音域が広がる保証なんてない。
実は広がらなくてもいい気がしてきている。
結果を求めないのはある意味、敗北かもしれない。
だが、たのしい。
韓国ドラマで見たのだが、辛い事のあった女の子が、電車に向かって叫んでストレスを発散するという場面があった。
僕が今している事はあれと同じかも知れない。
声を出すのが楽しい事に気づいてしまったのだ。
なので、これからも僕は河原で「アー」と声を出し続けるつもりでいる。
それでは、また。