いいところ
僕が住んでいる街は、いいところだ。
5歳くらいまで、僕は四国に住んでいた。
父の故郷。マンションに住んでいて、けっこう都会だった。
もう記憶は薄れているけれど。
親が離婚して、母、姉、僕の3人はこの町に引っ越してきた。
最初は戸惑った。
すごく田舎だったから。
夏になるとカタツムリがいっぱい出てくるし、台所には素早くて黒い、僕の苦手なあの虫も出た。
見渡す限り田んぼ、というのもカルチャーショックだった。
だけど、その自然の中で友だちとコクワガタを採ったり、ザリガニを釣ったりするのは楽しかった。
きちんと掃除をしてホウ酸団子とか使えばゴキブリも出ない。
夏になるとホタルも姿を見せてくれた。
ちょっと川を見るとカメが泳いでいて、たまに道路をイタチが横断してる。
何よりも、地元でとれる米がおいしい。
農協の直売所でいつも5kg1800円で米を買っているのだけど、もちもちして美味しい。
僕は米が大好きなので、都合がいい。
最近はあんまり見なくなったけど、無人の野菜直売所もけっこうあった。
すごく田舎だったけど、ここも最近ひらけてきた。
無料バスが去年から走り出したし、デパートも建った。
最寄りの駅にも急行が止まるようになった。
コンビニも近所に2軒、ちょっと歩けばもう1軒ある。
一言で言うと、中途半端な田舎だ。
だが、その中途半端具合が僕には丁度いい。
そういう訳で、僕はこの町が大好きだ。
それでは、また。