大腸カメラ、その後で
10日の火曜日、大腸カメラの検査に臨んだ。
大腸カメラの事を何人かの知り合いに尋ねたところ、
「けっこう痛い」
「なかなか苦しかった」
という話を聞いた。
……ビビった。
胃カメラを眠ってスルーしてしまったので、好奇心もあったのだが、
僕は胃カメラ同様、大腸カメラを眠ってやり過ごす事を決意した。
確実に眠るために、前日の夜は完全に徹夜した。
甥っ子に借りたライトノベルを読んで朝まで過ごすことに。
しかし、問題があった。
お腹が空いたのだ。
大腸を検査するために、腸内は空っぽにしておく必要があった。
前日から食事制限。
夜9時以降は水とお茶以外は一切禁止。
前日はおかゆと、ウイダーインゼリーを口にしたぐらいだった。
その2つもじゅうぶん美味しかった。
それでも頭に浮かぶのは、
お肉のことばかり。
肉が食べたい。すごく、食べたい。かじりつきたい。
その時点で、検査を終えたら食堂でカツ丼を食べる事が確定した。
読書をして夜明けを迎えた僕を待ち受けていたのは、
2リットルの下剤を飲み干すという手続きだった。
180ミリリットルずつ、2時間以上にわたって飲み続けた。
コップ一杯を15分以上かけて飲む、というルール。
4杯目以降は10分で一杯。
これはかなり体力を消耗した。
しかし、
寝不足+空腹+小説で号泣+下剤2リットル。
この合わせ技で、病院にたどり着いた時、僕はほぼ無心だった。
受付を済ませて、すぐに着替えることに。
半袖の上着に、お尻のとこが開いてるちょっと恥ずかしいパンツの2枚に。
点滴をつなげてもらって、検査前の待合室へ。
そこには僕を同じ格好の老紳士が、座っていた。
ペアルックだな、なんておかしく思っていたら、
老紳士が「楽しそうだな」と話しかけてくれた。
どうやら僕はニヤけてしまっていたらしい。
彼は今回で2度目の大腸カメラだという。
「あんたも、もう1度ここに来ることになるだろう」
「あの検査は、けっこう堪えるぞ」
という不吉な予言と忠告を残して、彼は僕より先に検査へ向かった。
少しだけ、心に不安がよぎった。
けれど、僕は作戦通り熟睡できた。
検査室のベッドの上で「眠くなるお薬入れますね」という言葉を聞いてから、
すぐに意識を失った。
というわけで、胃カメラ同様、大腸カメラの記憶も一切ない(笑)
検査後、2時間以上経って僕は目覚め、外来受付へ。
あの老紳士がいた。
どうだった?
へっちゃらでした。
と軽く言葉を交わして、僕らは別れた。
老紳士には付き添いの人がたくさんいた。
たぶん家族。
中年の夫婦。親戚っぽいおじさん。孫みたいな女の子。
対して、僕は付き添いなしの独りきり。
ずいぶん寂しい気分にもなったが、
それでも僕には、
やり残していた事があった。
薬が抜けきらないボーっとした頭のまま、ふらつく足取りで食堂へ。
目当てはもちろん、カツ丼。
(あまりにもおいしそうだったので、1枚撮った。携帯を持ってから、気になるものがあったら手当たりしだい撮る癖がついた)
一気にかきこんだ。
待ちに待ったお肉。
おいしかった。
強く生きて、周りの人を幸せにしたい。
叶うなら、家庭を築いて最後まで守り抜きたい。
そんな事を思って、帰宅した。
それでは、また。