新聞紙と
壁一面に新聞紙。
僕が十年前に貼った。
だいぶ黄ばんできていて、ところどころ破れてる。
「新型肺炎sars」「ヒトゲノム解析」「抜け毛相談」。
いつも見ている古いニュースが目に付く。
壁をふさぐことで「何か」に対して防御している。
それが何なのか自分でもわからないけれど。
風呂に入る時は真夜中限定、電気を全部消す。
もちろん浴室も真っ暗だ。
見られている、責められている、疎まれている、そういう気がする。
理屈では、そんなことはないとわかっている。
けれど、落ち着かない。
発作が起きると、目に見える点が全て人の目のように感じられる。
世界が色あせて、ピンクとグレーが僕に迫る。
「お前は嘘つきだ」
「無駄だ」
「すぐにばれてみんなお前を置いていく」
そんなことを言われている気になりどうしようもなくなる。
薬を飲むことでそこから脱出しているのだが、あれが僕の住む本当の世界なのか、とも思う。
だから、二つの世界を行き来している。
どう折り合いをつけるべきなのか?
今はただ薬で回避しているけれど。
いつかあちら側でも僕は平気でいられる日が来るのだろうか?
先が見えない。
それでは、また。