どうにもならない
朝から憂鬱だった。
飯ものどを通らない。薬もいいや、って飲まなかったら予想通り調子を崩した。世界に浸食される。
責められる。暴かれる。侵される。
急いでヒルナミン。
とにかくヒルナミン。
困ったらヒルナミン。
こいつで自分の脳は構成されているのか畜生!
……ヒルナミン。50mgでフラフラになる。足がふらついて、こけて、情けなくて、泣きたくなる。でも涙も出ない。脳が弱ると泣くこともできないと、何かの本で読んだ。
自分はこれからどうなるのだろう?
措置入院していた時のことを思い返す。
閉鎖病棟。
入院患者は僕の見立てでは主に3パターンに分けられた。
一つ目。「弱ってる人」ノイローゼとか、自殺願望があるひとなど、措置入院しているぐらいだからかなり弱っているのだけれど、まだ話ができる。会話が成立する。
二つ目。「混乱してる人」薬のせいなのか、そういう病状なのかは分からないけれど、記憶が飛んだり、暴れたり、自分を傷つけたりする。縛られたり、個室に鍵をかけられて閉じ込められたりしていた。幻聴に反応して一人で急に声を立てて笑ったり、突然叫びだす人もいた。
三つめ。「コンタクト不可能な人」もう会話が成立しない。いきなり殴ってきたり、裸になったり性器をひたすらいじる人もいた。床に寝転がって動かない、トイレにいかない。基本的に大便を身にまとって徘徊する。そういう人たち。
僕は一つ目のカテゴリーにいるのだと自分では思っている。けれど、悪化してしまえば明日はどうなるのか自分でもわからない。
会話や日常生活のできない人たちだってきっと何か辛いことや悩みがあったのだと思う。でも、彼(彼女)は適切な治療、ケアを受けられなかったのだろう。僕自身、発作のきつさは知っている。今日のように一時間ぐらいなら、戻ってこられる。だけどあれが、薬や注射なしでひと月、一週間、いや一日続いていくとすると、正気を失ってしまうと思う。
気が遠くなってくる。
薬を飲めるだけ幸せか。
ただ、耐えるだけの毎日。家の中でじっとしてる。調子がすぐれない日は、テレビや漫画をみたり、ゲームを一時間以上するだけで、発作が起きる。
ましてや外に出るとなると……。
先が見えない。
誰ともつながらない。
さみしい。人との触れ合いに飢えている。でも人が怖い。
どうにもならない。
ちくしょう。
それでは、また。