大掃除
大掃除。
師匠の指示通り、僕は部屋の掃除をしていた。
改めて部屋を見回すと、汚い。
生ごみがそのままの流し台。カップラーメンの殻が床の上に転がっている。脱いだ服も乱雑に重なったまま。出しっぱなしのゲーム機、マンガ本、新聞。
風呂をみるとカビだらけ。
窓ガラスは曇っていて、換気扇も油まみれだった。
週に一度ぐらいのペースで母が片付けてくれていたが、ここのところ母がこなかったこともあって、散らかり放題だった。
これは汚い、と言われても文句は言えないな。
しかし、「臭い」と言われたことはショックだった。
師匠が僕を見るあの目は汚物に対する視線だったのだろうか。
へこむ。
だけど、これから僕は変わるんだ。
現実と戦う。
外に出る。
働く。
……今はまだできそうにないけれど。
でも、やるしかないんだ。逃げ続けても未来はない。
もう一度、外に出て人と関わって、元気に普通に生きる。
そうだ。
「普通」に生きる。
それが今の僕の夢だ。
今僕の敵は目の前のこの汚れた部屋だ。
戦ってやる。こんな気持ちになったのは何年振りだろう。
今日は散らかったゴミを片付けることにした。
それでは、また。