ドラゴン、なのか?
昨日あれから師匠は、
「きゃあ!なにこれ!」
と女の子のようにおびえた声を出して(女の子だけど)、逃げるように出て行ってしまった。
……もう来なかったらどうしよう。
それよりも。
生まれてしまった。ドラゴンが。
だけど信じられない。
ドラゴンが本当にいるかどうかじゃなく、これが本当にドラゴンなのか、という点でだ。
ダンボールの中をのぞく。
黒い身体。目はまだ開いていないが、顔はひしゃげて歪んでいるように見えるし、頭がものすごくでかい。おまけに、小さな胴体から伸びた手足はダックスフントのように短かかった。
要するに不細工な生き物なのだ。
かっこよくないし、お世辞にもかわいいとも言えない。
師匠が逃げ出したのもわかる。
おまけ鳴き声は、「ニャー」だ。
……猫かお前は?
しかし生まれてしまったのだから世話をしようと思う。
生きているのだから。
ここに来てくれたのだから。
……というのは綺麗事で、本音を言うと僕は嬉しかったのだ。
一人きりだった部屋に誰かがいる(珍獣だけど)。
自分ひとりだけ世界から取り残されていると考えるより、遥かに救われる気分だ。
「ニャー」
餌をやる。
先週届いたやつだ。
元気にかぶりついている。
まるっきりキャットフードなのだけど……。
がんばろう。
負けるな、僕。逃げるな、僕。
それでは、また。