クロが寝ているうちに、五分間
ダンボール箱をのぞきこむ。
寝息を立てている。
餌をやるとすぐに眠るのだ。
生まれて二日。目はまだ開かない。
名前を付けた。
「クロ」と呼ぶことにした。身体が黒いから。
説明書によるとドラゴンは大体、五日ほどで目が開くらしい。
種族は謎だ。
写真付きの種族説明を見るがそれらしいものはない。
それにしても不細工だ。
頭がでかくて二頭身。
一応肉食なのか、手足には鋭い爪が光っている。
歯はまだ生えていないので、離乳食だ。
キャットフードのような餌をどろどろに溶かして口元に運んでやる。
空腹になると、猫のように「ニャー」と鳴き出す。
今のところ一日三回程度だ。思ったより手間はかからない。
排泄は兎の糞のようなものが、ポロポロ転がる程度。臭いはない。
昼ごろ、餌をやって眠ったことを確認して、僕は、緊張していた。
昨日はさぼってしまったけど、師匠との約束があったからだ。
一日一回、5分でいいから外に出ること。
腕時計をはめて、玄関で靴をはく。
外に出るのは怖い。
最近頑張って外に出ているが、そのたびに調子を崩してヒルナミンの世話になっていた。
確かに発作は治まる。
しかし、辛いことに変わりはない。飲んでも30分は苦しむ。
だが、約束は約束だ。何よりも自分のためにすることだ。
「先輩」である師匠が考えてくれた、課題。
ここで逃げるわけにはいかなかった。
意を決してドアを開いた。