十年前と今とこれから
統合失調症になって十年経った。
引きこもり続け、ほぼ変わらない生活。
人に怯え、脅威にさらされると調子を崩すというパターンはずっと変わらなかった。
ひどくはなっていないだけでもいいのか?
入院中、色んな人を見た。
一日中、ずっと同じ場所に立って一切動かない人や、椅子の下にもぐって「アーアーうーアー、アーアーアー」をエンドレスで繰り返す人、「下剤をくれえ~!」と懇願するところしか見たことのない人なんかもいた。要するに、日常生活を自力で行えない人たちだ。
僕自身は今のところ一人暮らしを継続できている。
しかし、考えてみればあの人たちも病気が悪化する前は、普通の暮らしをしていたはずだ。だから、この先自分も、ああいった状態に陥る可能性は十分にある。
こうして日記をつけることも、クロとの生活を満喫することも、師匠と相談して現実を何とか変えようとすることも、できなくなるかもしれない。そういう、「今の自分のすべて」が失われることを思うと、背筋が凍る。
しかし、あの人たちは「不幸」だったのか?
何かを求めて、手に入らない、葛藤する、という構造は今の僕もそうだし、普通に日常を送る健常者の人も同じじゃないだろうか?
その人のいる場所で精いっぱい頑張るしかない、というのは変わらないのではないのか?
それとも僕には認識すらできない圧倒的な違いのようなものが、人生を決定づけているのか?
他の人たちは現実をどうとらえて、どう戦っているのだろう?
わからない事だらけだ。でも、僕はその謎を解き明かしたい。
だから、外の世界に出て、色んな事を見て、感じて、知りたいと望むようになった。
恐ろしくて足踏みをしている事も事実だけど。
年だけ取って、もう30。
頭の中は未だに10代の気分。
「見た目は大人、頭脳は子供」って、なんかあの少年メガネ名探偵みたいだ。
……僕の方は駄目な感じがするけど。
ああ、焦る!
このままじゃだめだ!何とかしないと!でもわからん!
こわいし!わからんし!わからん!
あした、ししょうくるなあ。
それだけ、かんがえていよう。いまは。
あ、もうすぐ6時か。クロのご飯の時間だ。
それでは、また。