hatopoppo_25's blog

気づけば普通の日記になっていました。

【送料無料】僕のひきこもりナンパ宣言...

【送料無料】僕のひきこもりナンパ宣言...
価格:1,365円(税込、送料込)

自信がない事と、励ます事と、これでいいのか、について。

今日の師匠は一味違った。

輝いている。全身から生きる喜びのようなものを発しているように見えた。

着ている服も特別な感じ。

ふわふわのピンクのニット、花柄のミニスカート、ひざ丈のブーツという格好。

おしゃれオーラが出ている。メイクもなんかいつもと違う。

話を聞くと今日、サトウ君と食事に行くらしい。二人きりで会うのはこれが初めてで、すごく緊張しているという。

だからおめかししているのだな、と僕は理解した。

――デート、ですか。何かおしゃれな格好してますね。

「当然だ。これを見ろ」

スマートフォンを差し出され、その画面をのぞきこむと、雑誌の1ページが収められていた。

ピンクのニット、花柄のミニスカート、ブーツを身につけたモデルがにっこり笑っている。目の前にいる師匠とまったく同じ格好だった。

「参考」なんてもんじゃない。まったく同じ。おそらくこれは同じブランドの同じ商品だ。写真と実際に目の前にいる違いはあると思うけど、師匠の方が魅力的だと僕は思った。

――ぜんぶ、パクったんですか!?

「悪いか?私はおしゃれになんか興味ないんだよ。問題は使えるかどうかだ。周りの人間を魅了できれば、パクリだろうが何だろうが問題ない」

――でも。

「生き残れればいいんだ。細かい事は気にするな、それに」

――それに?

「私はモテる」

すごい自信だ、この人にはかなわねえ。

と思っていたら、師匠はバッグから手鏡を取り出し自分の顔を覗き込んで、

「私はかわいい、私はかわいい、私はかわいい、私は……」

と、つぶやきだした。

自信無いんですね……。と僕が聞くと、師匠はつぶやきを止め、急に虚ろ気な目をして僕をちらりと見た。そのまま視線を床に落とし、ぼそっと言った。

「かわいく……ないかな」

両手をぎゅっと握りしめ、唇をかみしめた。

急に小さな子供のように弱気になった師匠を見て驚いた。

僕は焦った。かなり焦った。

細かいことは覚えていない。ただ思いつく限り、すべての言葉で励ました。

 

「全力を尽くす」と決意を新たにした師匠を、玄関まで見送る。

ドアを閉める時、不意に立ち止まった師匠は小声で「ありがと、デート頑張る」と恥ずかしそうに言った。

戦場に向かって歩き出した戦士をドキドキしながら僕は見送る。

自分の中に沸き起こる様々な感情に圧倒されていたら、何かが足に噛みついてきた。

クロだった。飯だった。そうだった。

 

何だか落ち着かなかった。

調子が悪いのではなく、落ち着かないのだ、今も。

何なんだこれは。

……ああ。

それでは、また。