行ってない
朝、アパートから外に出る。
自転車に乗って図書館へ行く事に決めていた。
自転車の鍵を外す。スタンドをから車体を下すと、何かがおかしい事に気付く。
タイヤの空気が抜けている。
画鋲がタイヤに刺さっていた。
縦じゃなく、左右から。つまり踏んで刺さったのではなく、人の手によって突き刺された、という事になる。
恐怖を感じた。
狙われたのか?
近所で僕は変な人、と呼ばれている。
つらいことだ。
でも、だからといって自転車をパンクさせることはないだろう……。
ひどいよ。
ためしにほかの住人の自転車もチェックすると。
あった。
全ての自転車のタイヤに画鋲が刺さっていた。
自分だけ狙われていたわけじゃなかった。
僕は安堵したが、いま冷静に考えると何かおかしい安心感だ。
でも、パンクを直さないと。
動揺していた。すこし調子が崩れる。薬を飲むほどではないけど。
明日、自転車屋さんに直しに行こう。
……心に沁みついた劣等感を何とかしたい。
それでは、また。