いま
息が切れる。
田舎道をひとり、はあはあ言いながら駆け抜けた。
かゆい。
身体がかゆい。
急に体を温めたせいだと思う。
走っていられなかったので、僕は川辺に座ってちょっと休んだ。
水の流れる音に耳を澄ます。
心が落ち着く。とても穏やかな気持ちになった。
思えばこの10年間、僕はずっと焦っていた。
ー早く病気を治さないとー
ー社会復帰しないとー
ーこのままずっと一人なのかー
「今の自分」は駄目で、「何かを達成した自分」にしか価値がない。
無意識にそう信じ込んでいた。
もういいんじゃないか?
別に諦めたわけじゃない。
師匠と約束してそれを果たしたり、クロの世話をするという責任を負ったり、母の小言に対して負けずに言い返したり。
そんな一つ一つの人との関わりを、いま、楽しんでいる自分がいる。
十分楽しい。わるくない。
でも、働かなくちゃいけない。
もう少し勢いがついたら、バイトに挑戦したい。
そのためにも体力づくりだ。がんばろう。
僕は再び走り出した。
それでは、また。