hatopoppo_25's blog

気づけば普通の日記になっていました。

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木と、言ってほしい言葉

走った。

全力で走った。

すぐに息が切れる。

思うように体力はついてくれない。10年引きこもっていたら当然か。

だけど、わるくない。

 

 立ち止って休んでいると、

「気持ち悪っ!」

子どもの声。こちらを指さして、数人でわめいていた。

その時今日が土曜日で、学生が休みだという事に気がついた。

僕はさらに走って逃げた。

別に何かわるいことをしていたわけではない。

だけど、「僕は変な人じゃない!」と主張してもうまくいく気がしない。

それに僕は一応、「統合失調症患者」という看板(?)を背負ってもいる。もし事件や問題を起こしたら他の患者さんのイメージも傷つけることになる。だから、撤退する事を選んだ。

 

……本音を言うと、怖かっただけです。

 

雑木林にたどり着いたところで足をとめた。

ドキドキしていたのは、走っていた事と、人に怯えている事の両方のせいだと思う。

見覚えのある木の存在に気づく。

その木は地面から1メートル半ぐらいの所から2つに分かれている。他のぴん、と立っている木とは明らかに違う見た目だったので覚えていた。学生時代、友人とふざけて登った事がある。

その時、誤ってこの木の枝を折ってしまっていた。全体を見渡す。もう折れたところは残っていなかった。

毎年決まった時期に、この辺の木はノコギリか何かでおっさんたちにカットされている。おそらく、そういう時に切られたのだろう。

 

ただそこにいるだけで否定される。

 

自分と似たような生活をしている街路樹やこういう木を見ると、無性に親近感がわいてくる。

木は生態系の役に立っていて、僕は何の役にも立っていない、という違いはあるのだけれど。

……大きな差だな。

 

お前すげえな、なんて木を見て心の中で語りかけていたら、人が来た。

また、ちびっ子たちだ。

「僕も頑張るから、お前もそこで生きるんだぞ」と心の中で木に声をかけて、走ってその場を後にする。

自分が誰かに言って欲しい言葉だった。

自分はひとりじゃない。

そう呟きながら、息を切らしていた。

それでは、また。