異次元と彼女
友人が一人いる。
その友人と電話で喋った。
「仕事が忙しい」
「給料が上がらない」
「通勤電車が面倒だ」
引きこもっている僕にとっては異次元の話が次々と飛び出してくる。
単純にすごいな、なんて感心しながら聞いていた。
「お前はどうなの?」
と聞かれる。
言葉に詰まった。
色々、あるにはある。
でも、「ドラゴンを飼っている」とは言えないし、ましてや、
「失敗したら一億の支払いが待っている」なんて言えなかった。
ただ、「親身になって協力してくれる女性と出会った」とだけ伝えた。
するとあいつは、「そうか、実は俺、彼女ができたんだ」。
な・に・い・!
そこから、出会い、アプローチ、告白に至るまで全てのいきさつを聞かされた。
僕は頭をくらくらさせながら電話を切った。
あいつは喜んでいた。幸せそうだった。めでたいことだ。
しかし、僕は素直に喜べなかった。
羨ましさで心がいっぱいだった。「ちくしょう」って。
人として駄目な気がする。
心が貧しい。
だが、しかし、それでも。
心を許し、「自分と同じ」みたいに感じてただけに、あいつに彼女ができたという事実は僕にショックを与えた。
自分はなんて人間が小っさいんだ。自己嫌悪。
……ああ。
それでは、また。