ありがとう
僕はずっと一人暮らしだった。
さみしかった。でも、
今は違う。
クロがいる。
あいつは寝ているとき、ブヒブヒ鳴いている。
からかい半分に鼻をちょん、と押す。
「ブヒッ!」と反応する。
豚か?
ご飯の要求。
――……今、本読みたいんだ、ちょっと待っててくれ。
「ウー!」とうなって、噛みついてくる。
犬みたいだ。
と思えば、ベランダで戯れる小鳥たちに、「ニャー!」と話しかけている。
やっぱり猫っぽい。こたつで丸くなってるし。
クロは何だろう?
ドラゴン。確かにドラゴン。
角は2本生えているし、鋭い爪も生える。
目も赤い。この世の神秘だ、と思いつつ、
2頭身。
手足が短くて、ダックスフント体型。鳴き声は基本的に「ニャー」だ。
食事は肉食。好物はポテトチップ(のりしお味)。
僕はクロの世話をしているけど、その逆も成り立っている。
こいつがいてくれたから、頑張れた事がたくさんある。
買い物に出ることだったり、世話をすることによる生活リズムの安定や、人に話しかけることもそうだ。(クロを相手に会話の練習をしている。大体、無視されているけれど)
ひんやりと静まった部屋の中、世界でただ一人だと思っていた僕に、
光を与えてくれた。ぬくもりを与えてくれた。ここにいる意味を与えてくれた。
だから、大切にしたい。
守らなければいけないという責任感と、独りじゃないという安心感が、僕の中の何かを変えた。
感謝している。
ありがとう、クロ。
出会いがあれば別れもある。
クロとの別れもいずれ訪れるのだろう。
たぶん、それは避けられない。
その時、後悔しないように今を大切にしたいと思っている。
……。
それでは、また。