こっそり食べてやる
ばりばり床に食い散らかす。
クロはポテトチップが大好きだ。
最初はまさか食べるなんて思っていなかったので、驚いた。
動物には食べさせていいものと、いけないものがあるという。
例えば犬や猫にはネギ類が駄目だ、と学校の先生が言っていたのを覚えている。
その人の話によると、猫がネギを食べると、耳にかさぶたができて、やがてその部分が無くなるらしい。本当かどうかはわからないけど。
怖い話だと思っていた。
なので、クロに不用意に色んな物を食べさせないように、注意を払っていたつもりだ。
ましてやクロは珍獣だから、どんなものにどんな反応を見せるのか、見当がつかない。
だが、何気なく僕がチップをかじっていたらクロが手に噛みついてきた事があった。
軽い気持ちでチップを差し出すと、パクっ、バリっ!と食いついた。奴はチップの快楽を知ってしまったらしく、その日僕が残りのチップを口に運ぶことはなかった。あいつが全部食べた。
特に体調を崩したり、異変が起きることはないまま数日が経過。
そこから、なし崩し的にチップを与えるようになって今に至る。
というか脅される。
噛まれる。暴力だ。
なんてやつだ。
今まで4種類のチップを食べさせた。
うすしお、コンソメ、キムチ、のりしお味だ。
うすしお味:普通に食べていた。
コンソメ味:反応は良くなかった。好みじゃなかったらしく、残した分は僕が食べた。
キムチ味:あいつは辛いものが駄目だが、わざと与えた。ちょっと意地悪な気持ちがあった。一口食べて、「プギャー!」とか言って暴れた。
相当きつかったらしい。ほんとに悪いと思ってる。クロ、ごめん。
それで、
のりしお味:ヒット。かなり気に入ったらしく、一心不乱に食べる。これが一番食いつきがいい。文句なしにナンバーワンである。口の中が青のりだらけになる。
好きなものが見つかってよかったが、いつも僕が食べさせてもらえない。
もうわかってしまっているのか、クロはポテチの袋を見せるだけで反応する。
しっぽを振ってニャーニャー騒ぎ出す。これは後で、と言い聞かせようにも引く気が全くないらしく、噛みついてくる。
もっとちゃんと、しつけておけばよかった。完全になめられている。
それと。
食い散らかしたチップを床から掃除機で吸う時にじゃれてくる。
噛みつかれたホースに穴があいた。
ガムテープで補強。
動物を飼うってこういう事なのか?
……がんばろう。
実はいま、のりしお味をひとつ、隠し持っている。
クロが寝ているときにじっくり一人で食べるつもりだ。
……ふっふっふ。
それでは、また。