母
師匠が言った。
「自分がもし自分を好きならする行動」をしろ、と。
僕は、「自分が好きならすること=嫌いな自分が決してしないこと」と解釈した。
自分の嫌いなところ→反抗的なところ。
決してしないこと→「素直に感謝する」。
僕が一番、反抗している相手。
母だ。
恨んでいた。
僕が小学2年の時ぐらいに、母はうつ病になった。
ひどかった。自殺未遂するぐらい。
入院した。姉も病気で大学病院に入院していた。父はいない。
結果、小学5年ぐらいで僕はひとり暮らしになった。
面倒を見てくれる人はいた。
だが、家族が誰もいないのはさみしかった。
自分はだれにも求められない。いらない人間なんだ、と感じていた。
しあわせなやつが、きらいだった。
でも、今は感謝している。
その時母は毎日40分自転車を走らせて面会に来てくれた。
僕はだれも信じられなかったけど、母は僕を見捨てなかった。
自殺しなかった理由の1つでもある。
しかし、反抗心が未だにめらめらしている僕は1度もその事に対して母に「ありがとう」と伝えていなかった。
あんなにうれしかったのに。
伝えれば何かが変わるような気がした。
僕は実家へ向かった。
緊張した。
「何か今日、変だね」って、勘づかれた。
会話の流れとか一切無視して伝えた。
10年前、ありがとう。感謝してる。いつも減らず口叩いてごめん、と。
すると、
母は少し泣いた。
感謝を伝えた理由を軽く説明した。
雑談する。
全部バレていたという。
口では「ありがとう」と言っているときでも僕が人をにらんでいる事や、
小さい頃、「ともだち」といても僕がちっとも楽しそうじゃなかった事も。
要するに僕がどれだけ嫌な奴かって事を。
それでも僕はこの人に受け入れられていたのか、と衝撃を受けた。
僕は照れくさくなったのと、居心地が悪かったこともあって、逃げるように実家を後にした。
何だか変な気分だ。
それでは、また。