hatopoppo_25's blog

気づけば普通の日記になっていました。

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緊張

左手が震える。

ボタンを押せない。

美容室の予約を取ろうと受話器を握っていた。

髪を切る必要がある。

「不潔っぽい」と昨日、師匠に言われた。

ちょっと、いや、かなりへこんだ。

モテようとするよりまず、普通にならなければ。

 

とは言え、美容室が怖い。

おしゃれな店員さんがいっぱいいて、ダサい僕を見下してくる、そんなイメージ。

被害妄想だろうか?

「モテたいなら、床屋じゃ駄目だからな」と念を押されている。

電話だって苦手だ。

僕は声が小さい。話しかたも、もごもごしている。

これも師匠に突っ込まれた。意識すると余計に萎縮してしまう。

 

店の調べはもうついている。

ヘアースタジオ・イベントホライズン。

駅の近くにあるけど、目立たない美容室だ。

小さな店舗で、ガラス張りなんだけど、外からはあまり中が見えない造りだった。

静かな感じがいいと思って目星をつけたのだ。

自転車で出かけて、営業時間と料金を確認。

そのまま入店して切ってもらう勇気はなかった。

 なぜ予約の必要があるかというと、予約すると割引がきく店だからだ。携帯は持っていないので、100円均一で買った情報カードに、電話番号を記録して、速やかに撤退した。

 

30分ぐらい迷った。

でも、ここで逃げてても何も変えられない。

髪型も、僕の人生も。

6ケタの番号を押して、ええい!と受話器を耳に当てる。

「はい、イベントホライズンです」

野太い男性の声だった。

――あの、カットの予約をしたいんですけど……。

「はい?」

聞こえなかったらしい。

焦る。

手から汗が出ていた。

声を張って、できるだけはっきりと喋った。

ろれつは回らないが、何とか話を進める。

じゃあ、金曜日の朝9時で、という事になった。

 

電話だけでこんなに緊張してて大丈夫なんだろうか?

たぶん変な奴だと思われた。胸の中の何かが縮こまる。

嫌な想像で不安が広がる。

美容室なんか行った事がない。

どういうシステムで動いているのかも、わからない。

髪を切ってる途中で調子が悪くなったらどうしよう。

ヒルナミンは予防として飲むにしても、

副作用で余計にろれつが回らなくなるだろう。

でも、それしかないか。

ううう。

わからないものはこわい。

それでは、また。