育った

クロが大きくなってきた。

お腹に手を当ててぐっと抱き上げると、

重い。

１５ｋｇぐらいはあるだろうか？

僕の家には体重計がないからわからないけれど。

吠えたりしないし、なついてくれているので僕がケガをすることもない。

それでも。

もしこのままのペースで成長して行ったら、ここで飼い続けるのは難しくなるだろう。

このアパートはペット禁止だし、畳はすでに１枚駄目になってしまっているし。

うーん。

僕は過去に１度失敗を犯している。

カメを死なせてしまった。

高校から逃げ出した後、ぶらぶらしていた。

そのとき、ホームセンターで水槽とセットのミドリガメを買って、飼っていた。

９８０円。

けっこう可愛がってはいた。

毎日触っていたし（彼、あるいは彼女にとっては迷惑だったかも）、

水槽の掃除も頻繁にしていた。

甲羅をピカピカにする作業だって、楽しかった。

日に日に大きくなるカメを見ているのが、しあわせだった。

だが、

僕は決定的なミスを犯した。

真夏の暑い時期に、水槽を窓辺に置いてしまったのだ。

たぶん、暑すぎたんだろう。

西日にさらされたカメは、死んでしまった。

動かなくなったその姿と、取り返しがつかないという事実の分、僕は苦しんだ。

そういう事があったので、今回は生き物を育てているという自覚と、覚悟はしているつもりだ。

僕は里親でしかない。

クロがいつかいなくなるのは、さみしい。

だが珍獣（ドラゴン）をいつまでも飼ってはいられない。

ワシントン条約にひっかかってるかもしれないし。

正直クロをずっと飼い続けて、いつか死んでしまうところを見たくないというずるい考えもある。

やっぱり、覚悟が足りないのかもしれない。

だから、

動物を飼うのはこれで最後にしようと思っている。

いずれはクロと別れる日が来る。

その時は師匠とも……。

また１人か。

さみしいなあ。

それでは。また。