hatopoppo_25's blog

気づけば普通の日記になっていました。

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バレバレ

午後1時。

いつも通り師匠はやってきた。

白の長そでワンピースに黒のタイツ、ペタンコ靴というシンプルなファッションだった。

 

師匠がレポートを書き終わったことを確認してから、この一週間でやった実験を報告した。

成功も失敗も包み隠さず。

「もう、大丈夫だな」

――はい。

自信を持って返事を出来た。

――でも、楽しいのはいいのだけれど、こんなにフラフラしてていいのかな、と。

「楽しくなければどんな事も続かないものだ。楽しめばいい」

にっこり笑ってくれた。と思うと一転、厳しい顔になって師匠は言った。

「だが、いつかはやるべきことをやって責任を果たすべきだと、私は思う」

働くべきだ、という事だろう。

僕は黙ってうなづいた。

 

そのあとは2人で、人生の目的って何だろうとか、どうすれば納得して死ねるのか等を話し合った。

軽く1時間以上は話していた。

僕はずっと自分に自信がなくて人と話す事が苦手だった。

でも、ここ最近はこう思っている。

ちゃんと相手を理解するようにして、同時に相手に自分を理解してもらえるように努力すれば、自分だって結構人と話せるじゃん、と。

 

「じゃあ、もしまだ残っていたら、私の分もジャンボシュークリーム買っておいてくれ。金は払う、ん?」

師匠の携帯にメールの着信があった。

画面を確認すると師匠は、

「んふふふふふ」と笑った。

――どうしたんですか?

「イリエ君からだ♪」

満面の笑み。指で髪をもてあそぶ。目がランランとしている。

僕は気づいてしまった。

――その人の事が好きなんですね?

「なぜわかったっ!?」

師匠は目と口の両方を丸くした。僕はそんな師匠も可愛いと思った。

――バレバレです。

「そうか……」

 はにかんだその顔は乙女そのもので、僕の胸はキュンとしてしまった。

未だに僕は師匠への気持ちを引きずっているのに、この人はもう次の恋に向かって走り出している。

すごいバイタリティだ、やっぱりこの人にはかなわない、と思った。

 

師匠を見送った後、僕は火照った顔を冷やすために散歩に繰り出した。

夕方になっても日は高く、吹く風も冷たくない。

アパートのすぐ近くに咲くフキノトウを見て、季節の移り変わりを感じた。

僕ももっと変わっていかないと。

焦りではなく穏やかに、何かをやらなきゃな、と思った。

それでは、また。