たたかい
朝、甥っ子(甥っ子兄弟の兄の方)から電話があった。
「○○(僕の名前・呼び捨て)。勝負しようぜ!」
まるでポケモントレーナーのような誘い方だと思った。
寝ぼけまなこで僕は答えた。
全力でつぶしてやるよ、と。
今日は男の戦いを繰り広げた。
1対1だ。甥っ子と真剣勝負。
実家に着くと、すでにニューファミコンにはカセットが刺さっていた。
甥っ子は最近髪が伸びた。だけど切ってない。
中学校の校則から解放されて自由になったからだ。
姉と甥っ子に、昨日高校の入学説明会に行ったという話を聞いた。
早くも茶髪の同級生がいたという。ちょうど甥っ子の隣に。
ツンツンのソフトモヒカンで、いかつい顔つき、こいつは怖え、と思っていたらしい。
ところが説明が終わって立ちあがると彼は背が低かったらしく、「逆に可愛かった」と姉は言っていた。
ひどいよ。
僕も背が高い方じゃないから(167cmぐらい)、モヒカン君の立場に立って話を聞いてしまっていた。
でも彼はまだ成長期かもしれない。チャンスはある。姉の話を聞きながら、牛乳飲めよモヒカン、と僕は祈った。
――本気でやるのか?
「当たり前」
ヨッシーのタマゴ起動。
ファミコンなので、読み込み時間なんかない。テレビにはいきなりヨッシーがバン、と出てくる。
1Pがマリオで、2Pがルイージ。
僕はある理由からルイージが大好きなので、2Pを選んだ。
2時間。
午前10時から正午まで、がっつり対戦した。
最初は勝敗を記録していた。
だけどそのうち、勝ち負けなんかどうでもよくなった。
笑ったり、さわいだり、笑ったりした。
僕はずっと甥っ子たちに対して引け目が合った。
あの子たちには色んなものをもらった。なのに僕はこんなんだし、いつもかっこ悪いとこしか見せてないし、働いてないし。
結構ウジウジ悩んでいた事もあった。
それでも彼らと関わり、遊ぶ事は楽しくて、離れることなんて考えられなかった。
感謝してる。
いまは、楽しけりゃあいいじゃん、ぐらいしか考えてない。
前進してるのか、後退してるのかは分からない。
でも、今日も楽しかった。
――ゲームばかりやってたらロクな大人になれないぞ。
「○○、どの立場で言ってるのかわかんないよ」
僕らはゲラゲラ笑った。
今日も最高に楽しい1日だった。
明日も甥っ子と遊ぶ約束をした。
楽しみだ。
それでは、また。