甘えたい
僕はよく甥っ子たちの勉強を手伝う。
いつも最初は懇切丁寧に教えている(つもり)。
問題のとらえ方と、それに対して求められている公式などの操作、テストに出てくる問題の予想まで。
特に数学なんかはしつこいぐらい途中式を見せたりする。
自分が甥っ子たちに必要とされている喜びと「問題を教えることのできる自分」を顕示する喜びに支配される。
……嫌な奴だ。
それを知ってか知らずか、あの子たちはついて来てくれる。
だが、途中で僕は変わる。
自分でやれ、と言ってしまう。
「僕が手伝えるのはここまでだ。あとは自分を信じて頑張れ。僕の分まで生きてくれ……!」
バタッ!
寝たふり。
あの子たちは「逃げやがった(笑)」とか「最後まで責任をとらない駄目な大人だ(笑)」と適当に笑っている。
ふざけて誤魔化しているけど、何かイライラしてしまっているのだ。
やっていられなくなる。
何故かというと、嫉妬しているからだ。
「自分の時は誰もここまでやってくれなかった」とか「ちくしょう、うらやましい」とか思ってしまう。
要するに、僕は「誰かに甘えたい」という願望が満たされていないのだと思う。
最近、コンビニでお母さんになでなでされているちびっ子を見た時に気づいた。
なんていうか、自分より大きい何らかの存在に頼りたい。
認められたい。
かわいがられたい。
しかし、僕はとっくの昔に成人している大人なのだから、そんなの認められないだろう。
でも、甘えたくて仕方がない。
甘える相手を探した事がある。
だが、見つからない。
姉には甘えられないし、母に至っては逆に僕に甘えてくる。
膝枕を要求された事がある。
1回だけ応えた。
そのとき母は、
「死ぬときはこういう状態で死にたい」と笑っていた。
僕はそれを聞いて、また置いてけぼりにされるんだな、とげんなりした。
他に目上の人とかが周りに居なかったので、僕の甘えん坊計画はそこで座礁した。
満たされない。
だが、しょうがない。
しかし、今の僕は人の「甘えたい願望」がわかるので、人を甘えさせる事は出来るかもしれない。
まあ、実際には甥っ子たちに嫉妬してしまうのだけど。
奪うより与える事だ、と自分に言い聞かせて頑張ってきた。
これからも頑張るつもりだ。
この連休は甥っ子たちのテスト勉強を手伝う事になっている。
イライラしたり葛藤したり、自分勝手な叔父で申し訳ないが、もうちょっと彼らに学ばせてもらおうと思っている。
いや、もしかしたらそういう作業自体が僕の甘えなのかもしれない。
それでは、また。