母
僕の母はあまり自分の気持ちを語らない人だ。
たまに毒を吐くけど。
「あとは死んでいくだけ」とつぶやいて、僕に背を向けてタバコを吸う。
あの人は諦めている、というか最初から人生に期待していない。
僕はそれが気に食わなかった。
最近、母とケンカする事が増えた。
タバコの量が増えた事や、
喘息の発作が起きているのに病院をサボる事を僕が咎める、
するとケンカになる。
僕は建前では立派なことを言う。
「送り迎えしてくれる姉ちゃんの気持ちを無駄にするな」とか、
「わざわざ電話をかけてくれる看護師さんたちの心配が分かんないのか」とか。
もっともらしい事を言って言う事を聞かせようとしてしまう。
本当は。
駄々をこねているだけだ。
僕は母がいなくなる事がずっと怖かった。
子供の時から。
母は何度か自殺未遂をしている。
それがうつ病のせいなのか、母という人間自身の選択なのか、僕にはわからない。
でも、とにかく不安だった。
少なくとも僕という存在は、母にとって「この世に生き続ける理由」にはならなかったようだ。
まるで「お前なんかいらない」と言われている気がしていた。
それが辛かった。
それで、僕は未だに拗ね続けている。
母がたばこを吸う事は、緩やかな自殺をしているように思える。
死んでほしくない。
かと言って、自分の中に母をこの世につなぎとめるだけの材料がない。
それが悔しい。
少なくとも、イライラしてケンカしてるのは正解じゃない気がする。
しあわせって、なんなんだろうか?
そういう事を最近、考え続けている。
それでは、また。