様式美
ここのところ、だいたい平日は甥っ子2人がこの部屋に遊びに来る。
学校帰りに寄っていく。
彼らは2人兄弟。
通称は「兄さん(兄)」と「天才(弟)」。
兄さんはこたつに入って携帯をいじっている事が多い。
昨日は、話題の号泣議員を見てゲラゲラ笑っていた。
しばらくして、笑い疲れたのか兄さんはこたつでそのまま寝た。
一方、天才はカードゲームが大好きだ。
「マジック・ザ・ギャザリング」というゲーム。
彼が保育園児の時に僕が教えた。
兄さんにも教えたのだけど、ハマったのは天才だ。
とにかく貪欲で、何回やっても飽きる事が無い。
僕は数回やるだけで、もう飽きた、と思う。
だが、彼には他に対戦相手がいない事と、教えたのが自分だという責任感も手伝って、僕は彼と長時間対戦している。
「マジック」は遊ぶ人の性格が結構露骨に出る。
僕のプレイスタイルは、手下のカードをいっぱい並べて、一気に攻めて一撃で相手を仕留める、というものだ。
対して、天才は変幻自在だ。
強力なカード1枚で勝負を決めたり、僕の動きを封じたり、捨て身の攻撃をして来たり、時に僕と同じスタイルで強引に勝利をもぎ取ろうとしてくる。
それで、いつものパターンは。
僕が手下をいっぱい並べる。15体くらい。
そして勝負が決まる、と思ったら、
天才が「全体除去」と言われるカードを使って並べたやつを一気に排除する。
並べた奴が全部死ぬ。
僕の努力は一瞬で否定される。
その時に僕が「ひどいよ……」とつぶやき、
彼が「これが人生の厳しさだ!」みたいな事を言う。
それが毎回繰り返され、もはや様式美みたいになっている。
負けるのは悔しいのだけど、その時の天才のちょっと意地悪な笑顔が僕は好きだ。
あれを見るために僕はせっせと手下を並べているのかもしれない。
ちょっとSMチックな気がするけど、そういうのもいつか思い出になるのかなって思う。
だから、そういう手続きを僕は大切にしている。
単純に、笑いながら遊んでいるのが楽しい、という事もあるけれど。
それでは、また。