手放した
先週の平日、中古ゲームショップへ行ってきた。
おもちゃの買い取りをしてもらうために。
僕は12年前、ちょうど統合失調症を発症するぐらいの時に、仮面ライダーにハマった。
入院していた時も、他の患者さんに1人1人許可をとって、テレビのチャンネルを合わせてもらっていたぐらいだ。
退院してからも、ずっと見ていた。
ライダーたちはみなプライベートな問題を抱えている。
記憶喪失だったり、失業中だったり、死んだ弟の事を忘れられなかったり。
自分の事で精いっぱいのはず。
なのに、人を助けてる。
しかも、命をかけて。
そこに僕はシビれた。
シビれた僕は、毎週日曜日、午前8時にはテレビの前に座っていた。
そして、仮面ライダーのフィギュアを集めていた。
1体700円くらいのやつ。
それが50体くらい、部屋にならんでいた。
その人形をこの間、買い取ってもらった。
なぜ売ってしまったのかというと、
僕は少年の心を失くしてしまったのか、ライダーを見てもそれほど興奮しなくなった。
耐性がついてしまったのかもしれない。
それに人がこの部屋に来るたびに、
「すごいいっぱいフィギュア持ってますね!」
――ええ、まあ。
と言うやりとりをするのが面倒になったというのもある。
部屋をすっきりさせたかったし、捨てるくらいなら、と思い店にもっていった。
結果。
全部で1500円になった。
もういらないからいいや、って思っていた。
だけど。
店員さんが人形を箱にポイって投げるのを見て、ちょっと傷ついた。
もうちょっと、丁寧に……。と思った。
やっぱりまだ愛着があった。
僕は若干のさみしさといっしょに1500円を受け取った。
できたお金で缶ビールを買った。
1本だけ。
何かを手にするために、何かを失う。
この世の摂理はどうにもせつない。
そんなふうに思った。
ビールはまだ飲んでいない。
それでは、また。