オーバーオール
今日は通院日だった。
ここは台風が接近してきているせいか、雨風がひどかった。
うわあ、どうしようと思っていたら、姉から電話があった。
病院まで車で送ってくれるという。
僕は素直にじゃあ、お願いします、と答えた。
僕は普段ジーパンにTシャツという格好が多い。
だが、今日は古着屋で買ったオーバーオールを着てみた。
オーバーオールを着る事自体が新鮮だったので、僕は特に工夫せず中にTシャツを着込むだけの格好をしていた。
それで、姉が迎えに来た。
反応があった。
「オーバーオール、違和感あるね」ということだった。
平たく言うと、ダサい、ということだった。
僕は内心へこんだ。だが、食い下がった。
何が駄目なのか教えてくれ、と。
姉曰く。
1、ホントにただ来てるだけ、という感じだから子供みたい。
2、なのに、あんたは大人だから違和感がある。
3、何か工夫した方がいい。
具体的には、「スニーカーをゴツいブーツに替える」とか、「オーバーオールの裾をロールアップする」とか、「肩ひもを緩めてだらりとさせる」とか。
僕には思いつかない発想がポンポン出てくるので、単純に姉ちゃんすげえ、と思った。
正直に言うと、ファッションの事を教えてもらえるのも嬉しかったけど、
僕にとっては、姉が心を砕いてアドバイスしてくれるという手続きそのものが嬉しかった。
僕らは子供のころ、仲のわるい姉弟だったので今日みたいに何かを教えてもらう事がほとんどなかった。
というか、嫌われてた(と思っていた)。
最近は今日みたいにファッション指南を受けられるようにはなったけど。
大人になってずいぶん距離が縮んだけど、いまだに一緒にいて緊張する局面はある。
そういう警戒をはらんだ間合いみたいなのが、今日はいつも以上になかった気がする。
なので、嬉しかった。
こんな日が来るとは子供の頃の僕には想像もつかなかった。
今日はなんて日だ。
それでは、また。