急用
僕は発声練習をしている。
いつもは近所迷惑を考えて、近所の河原まで行って声を出している。
大きく口を開けて「あー!」と。
だが、暑いのでここ1週間はあんまり行っていない。
今日の午前中、アパートの隣の部屋の人がどこかへ出かけて行った。
なので、こっそり部屋で発声練習をした。
そしたら、声域が広がっていた!
上方向に1音。下方向に半音。
図(?)にすると。
最初の頃 ドレミファソラシ だったのが、
今日 ファ♯ソラシドレミファソラシドレミ まで出せるようになっていた。
成長した!サボっていたのに成長した!
ひゃっほう!と思っていたら玄関のチャイムが鳴った。
甥っ子だった(甥っ子兄弟の弟の方)。
サッカー部の帰りだった。ここのところ毎日来てる。
いきなり頼まれた。
「税についての作文書いて!3枚!急いで!」と。
何でも、明日は中学校の登校日で、宿題の提出を迫られているという。
その中に「税についての作文」が入っていた。
あいつは作文どころか、他の宿題もやっていなかった。
そういう訳で、切羽つまって見えた。
毎年、甥っ子たちの作文は僕が書いていたし、べつにいつでもいいと思っていた。
だが、今回は「時間がない!すぐ書いて!」という状況だった。
なので、僕は急いで書いた。
税金について検索してデータを集め、小説を書くときの構成を利用し、勢いに任せてババッと書いた。
クオリティに関して自信がない。
が、何とか書ききった。
ちょっと焦ったけど、まだ甥っ子の役に立てる事が嬉しい。
ほのかに燃えるハイテンションと、充実感があった。
……いや、冷静に考えると宿題の肩代わりというのは本人のためにならないか。
喜んでる場合じゃないかもしれない。
まあいいや。
結局、甥っ子はここを出た時点でまだ宿題を終えていなかった。
あいつはいま、戦っている事だろう。
頑張れ、とちょっと祈ってみる。
それでは、また。