鍵と癖

カップラーメンを待つ間、貧乏ゆすり。

僕の癖だ。

これは自然に身に付いたものだ。

それとは別に、強制的に身に付いた癖がある。

眠る前に何度も鍵を確認してしまう。

僕は１１年前、精神病院に措置入院していた。

入院中、閉鎖病棟だったので、出入り口に鍵を掛けられ、移動を制限されていた。

それはべつによかった。

だが、病棟内に鍵がなかった。

寝ている間に他の患者が寄ってくる事もある。

当然、プライベートな空間もない。

人といると疲れてしまう僕にとってはきつい事だった。

病気がひどくて弱っていたわけだし。

１番困ったのはトイレだった。

ここにも鍵がない。

ノックする人がいない。いきなり開けてくる。

「あ、ごめん」とか謝ってくるのはまだいい方で、

「出て」とか言われた時はどうしようかと思った。

入院して休むはずだったのに、ものすごく消耗していた。

ロッカーには鍵があった。

着替えや生活用具、本とか靴とか入れるやつ。

鍵を閉めてないと、盗まれる。

僕の入院中でもそういうトラブルがあった。

お前俺のチップ盗んだだろ！とか、

勝手にコーラ 飲みやがったな！とか。

僕自身はペットボトルのお茶を勝手に飲まれた事がある。

おっさんと間接キス……。

すごくへこんだのを覚えている。

それ以来、鍵があるとかけたくなるし、かかっているかを確認する癖がついてしまった。

トラウマです。

もう入院はしたくない。

クロだって飼っているし、

喘息の母を放っておく事も出来ない。

師匠とだって会いたいし、

もっといろんなものに触れてみたい。

 どんどん入院できない理由ができていく。

負けはしない。

それでは、また。