同級生
同級生の男の子が訪ねてきた。
久しぶりに僕のことが気になったらしい。
洗練されたファッションと、学生時代からは想像もつかない程低い声に気圧される。
近況を聞く。
結婚したと言う。
マンションに住んでいて、妻と二人の子供を養っている。
休日には近所の子供たちに野球を教えているらしい。
ほかにも、同級生の女の子が外人さんと結婚したとか、学生時代の友達と今でもつるんでいるとか、色々。
どこか食事にでも行かないか?と誘われた。
嬉しかったが、断った。絶対に発作が起きると確信していたから。
君は今何してるの?と聞かれる。
言葉に詰まった。沈黙。
気まずい。
それでも、彼はいいやつなのでいろんな話を振って場をつないでくれた。
僕はくらくらしていた。
それじゃあ、またね。うん、ありがとう。
バタン、とドアを閉めた後、そのままドア越しにずるずるへたりこんだ。
圧倒的な差を見せつけられた気がした。
べつに、何か競争をしているわけでも、彼に嫌味を言われたわけでもない。むしろ善意で会いに来てくれたはずだ。それは嬉しかった。
しかし、僕は落ち込んだ。
彼はいろんなものをつかんでいる。結婚して、子供を授かり、仕事をして家庭を守っている。立派だ。かっこいい。
それに比べて僕は……。
ああ、ああああ。
それでは、また。