スケッチ
今日も僕は長時間外に出た。
台風が過ぎ去った青空の下を歩き回る。
人と出くわさなければ、調子は崩れない。予防でヒルナミンを飲まなくても大丈夫。
ノートとふでばこを持って行った。
絵を描くためだ。
スケッチ、なんて立派なもんじゃないけど、風景を書きたいと思った。
人は僕を拒絶するけど、世界は僕を排除しない。
そう思ったので自分から世界に近づいてみることにした。
目で見て、手を動かし、世界の一端を手にする。素敵な事だ。
よし、描こう。
……とは言うものの、思うようにはいかなかった。
書きたいものがうまく紙の中に収まらないし、人工物は簡単に四角とか丸とかでとらえられるけど、雑草や木など自然のものは複雑だ。
改めて見ると、こんな形をしていたのかと驚いた。不思議だ。神秘だ。
むずかしい。
いままで僕は世界の何を見ていたんだろう。
でも、たのしい。
何かに近づく事はこわい事だ。
嫌われるかもしれない、無視されるかもしれない、相手にされないかもしれない。
そんなふうにいつも僕は怯えていた。
さみしかったから。
でも、風景を見て、絵を描いている間は、独りじゃない気がした。
絵を描く人はこういう瞬間も楽しんでいるのかな。
下手な絵を3枚書いて撤退した。
それでは、また。